人生という日常の合間に見つけた平凡な感動や、過ぎ去る時間のぼんやり思惑。 人生紀行

 
小学生の絵の具
No.128 春 イロイロ(3) 2009. 6. 4

 「美術関係へ道を志す者が画材をケチるなんて言語道断!」
 その道の先達ならば、そう言って私を責めただろうか。
 目前の用途である「入学試験」に臨む為の画材なんだから「良いもの=高いもの=発色の良さ=試験合格!」と発想して、ためらう事無く売り場で一番高いウインザー&ニュートンの絵の具を買うべきだったのかもしれない。それも長いこと悩まずに、いわゆる「大人買い」って奴でね。
 私の場合、結局は“安さに惹かれた”ってことなんだけど、自分の絵の具に関する経験と知識+店頭の色見本から〔その性能差は多くなく、それを引き出す腕も自分には備わって無い〕と判断したのだ。
 〔倍の値段ほどの違い(向上)が、描いた絵に相対的に現れてくるだろうか?〕
 輸入品であることの輸送費と、西洋美術界に対するブランドイメージが、ウインザー&ニュートンの価格に多く添加されてることは予想がつく。つまり絵の具の品質や性能以外の部分で値段が高くなってるだろうと‥と。
 
 「高価な道具を使えば良い絵が描ける」ってもんじゃない。「どんな絵を描きたいか?」という問いに対して、それを満たしてくれる画材であるか?が大事なのだ。安い値の道具だからと、描ける絵に疑いを抱いたり、自信を無くす必要など無い。自分の描きたい絵に、紙・筆・絵の具などが適合するかどうかってことだ。高価な物じゃないと満たされない「心」は誰しもが有するかもしれないが、「他人の決めた価値(価格)」で満たされることは、美術・芸術や表現の道に沿うものじゃない、言語道断!(その道の先達ならば、そう言うハズ。)
 私にとってはそのとき買ったホルベイン絵の具の使い勝手に大きな問題などは無く、今でもとても良好だ。あのときは買わなかった高価なウインザー&ニュートンの絵の具も現在では少し使うけど、まぁ、その違い(差)ってのはわかりにくいと思う。要するに「微妙な差だ」と感じている。
 
 ちなみにその大学院(工芸科木工)の受験は「出題の可能性がある」ということで水彩絵の具を準備するように言われていたものの、実際の試験では水彩絵具を使う出題は無く、その試験も不合格に終わった。(※単に実力不足。もう10年近く前のことです。)
 
春 イロイロ(4)へつづく 
 

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