人生という日常の合間に見つけた平凡な感動や、過ぎ去る時間のぼんやり思惑。 人生紀行

 
色のミニフレーム
No.127 春 イロイロ(2) 2009. 4.28

 え?「画材屋」というのが既に“特別”な感じがする?画材屋とかもう響きだけで、遠い存在??
 いやいや、お待ちあれ、その絵の具、「東急ハンズ」や「Loft」の文具・画材コーナーにも大体あるような品だと言えばどうだろう。近所の文房具屋さんだって実は置いているかもしれない。
 小学校で買う「ぺんてる」とか「サクラ」とか、あるいは新興勢力の「ダイソー」とか言うメーカーと比べたら、扱っている店舗数は少ないし、知る人が知るメーカーの高い絵の具ってことにはなるが、ホルベインやウィンザーニュートンと言えば絵の具のメーカーとしてはとても有名なところで、絵画教室・美術系学校等に通う学生〜大人なら知らないハズが無い程だ。
 日本のメーカーであるホルベインにおいては日本国内では特別とは言えない程に流通していながら、安くて品質はかなりいい部類に入るので、日本に居ると言うだけで比較的恵まれた画材環境に囲まれていると思っていい。
 現に私が使っている「ホルベイン」の絵の具は、名古屋のLoftで買った。
 それも当時は絵を真剣に描くつもりとかではなく、他用で“水彩絵の具の必要に迫られて”名古屋のLoftに買い行き、ただ行き会ったりばったり的に店頭に置いてあった「透明水彩絵の具」という分類から1つを選んだのだ。
 そのときは、確かイギリス製「ウィンザー&ニュートン」の高い絵の具セットも隣に陳列していたように思う。
 お店の説明ポップを読んだり、絵の具チューブをシゲシゲと眺めて見ては、「やはりウィンザー&ニュートンのが良いんだろうか?」と商品を前にしばらく悩んだ。
 同じ色数セットでホルベインとウィンザー&ニュートンの価格差は2倍以上違う。ウィンザー&ニュートンが高いのだ。お店には1色のばら売りチューブもあり、ウィンザー&ニュートンの特殊な原料を使っている一部の色には、1本(1色)わずか5mlで1000円を越えるものすらある。
 その時の私には、それらの水彩絵の具に関して品質や性能を比較できる程の詳しい情報や知識は少なく、そのモノの良さを計る上で店頭価格はかなり大きな指標の一つであった。当然、高いから良い品物なんじゃないか?≒書いた絵がよく見えるんじゃないか?という幻想が頼りの綱だ。
 それから“必要に迫られて”という絵の具の使用目的は、入学試験の準備画材としてであり、数ヶ月後に迫った美術系大学院の受験で使う予定の道具だった。
 その頃の私は毎日勤めていて月収20万円以上あったし、「ウインザー&ニュートン:透明水彩絵具 12色セット・各5ml(希望小売価格:5565円)」をポンと買うお金(貯金)の余裕も相当にあった。用途・内容・収入量から比較すれば「それくらい安い」と言えただろう。一緒に買い物について来てくれた連れも「高い方にしておいた方がいい」とアドバイスしてくれた。
 
 が、しかし、熟考の上で私は高価な方の絵の具を却下。買ったのは「ホルベイン:透明水彩絵具 12色セット・各5ml(希望小売価格:1995円)」だった。
 
春 イロイロ(3)へつづく 
 

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