T−3 《旅立ちの日》
 
スケジュールを次々にこなして出発当日の朝1:00。(夜中)
まだ眠りに就いていなかった。
 
 旅への期待が膨らみ過ぎた…などというメルヘンな理由ではない。ふんどし祭りの2次会最中であった。2次会が終わってヘロヘロに疲れた身体で大学に到着したのが、夜中の3:00すぎ。その疲れた身体で、椅子の制作に取り組む。そう、出発前に完成させるべきの椅子がまだ出来上がっていないのである。大学の後輩に手伝ってもらいながら4:30には椅子を形にすることができた。
 ゼーゼー…。徹夜の身体に20`の荷物を背負いこんで、最寄りの駅まで後輩に車で送ってもらう。駅に着くと朝の5:00。あたりはもう明るくなっていた。6:00の始発がでるまで、ひとり駅にたたずむ。
〔こんなことで、今日の12:00には船の上に俺は居るんだろうか?〕
 
 眠たく、疲れた身体でぼんやりとそんなことを思う。船の出発は12:00。30分前に神戸のフェリーターミナルへ到着してチェックインしなければ旅立つことはできない。
 
できなければ、…その時はシャレにするしかない。
 
 始発電車が来た。荷物が重く、これからの行程に不安を覚えた。荷物の中身はなるべく少なくしたつもりである。着替え1セット・洗面用具1セット・文房具1セット・薬1セット・サンダル・蚊取線香・寝袋・レインウェアー・カメラフィルム・カメラ・カメラレンズ・タオル3枚・おみやげ3点・ガイドブック2冊・文庫本1冊・けん玉・コップ・洗剤・シャンプー・軍手・ペンライト・虫除けスプレー・食料少し…、という内容である。一応、宿がなければ野宿する気でいたので、そういう装備が詰まっている。
 行程中にほとんどの物を使用したが、カメラが特に重くて厄介だった。でも、カメラがないと旅の楽しみが私にとっては3割5分の減少である。でも、でもね。カメラって持っていないほうが自由に開放的に自然に楽しめると思う。だってさぁカメラがあると、どーしても写したくなっちゃうでしょ?カメラなんて持たずに手ぶらで町を歩く気持ち良さ、手ぶらで野を駆ける爽快さ。カメラが無いほうがそこの世界に入り込めると思うし、カメラって貴重品だし、精密機械だし、気を抜けない存在なんだ。だから時にはうっとうしくなる。でも、でも、でも!知らない土地を写真に納めて、友達に教えたい、家族に教えたい、自分がそこに居たんだって確認したい、一枚の絵として楽しみたいから、私にとってカメラは旅に欠かせない。旅には、知らないことを楽し むことと、後々それを語る楽しみもある。
荷物 今の私は、語る楽しみを少し優先させているのかも…。今回が独り旅ということもある。
 しかし荷物は軽い方がいい。小さなリュック一つでも1年や2年間の旅なんてできる。うわさでは、スーパーのビニール袋一つでずーっと旅してる奴もいるとか…。荷物がそれなら強盗にも狙われにくいし、移動もお手軽である。大荷物で備える私にとっては驚異的な軽量荷物だ。…私は物がなくては生きてゆけない文明病患者の一人であるのだろうか?
 
 名古屋に到着して高速バスセンターで神戸行きのバスを待つ。チケットは以前に予約購入済みだ。朝6:30というのに、この待合室は老年のカップルやグループがひっきりなしに出入りしている。登山装備に身を包む白髪の老夫婦、軽装備の老婦人3人組…、みんなこれから国内の登山・ハイキングや観光を楽しむのであろう。その歳(見かけ)でその活力。お見事である。
 
 7:40神戸三ノ宮へ向けてバスが出発した。快適にバスは進み11:00に三ノ宮に到着。船内での食料品を購入したかったが時間がないので真っすぐ国際フェリーターミナルへと急ぐ。船のチェックインと出国審査を終えると11:30を過ぎていた。
 
7月16日正午12:00、汽笛と共にエンジン始動。船は中国天津へ向け出発した。
さぁ、いよいよ旅の始まりです
 

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