人生という日常の合間に見つけた平凡な感動や、過ぎ去る時間のぼんやり思惑。 人生紀行

 
紅葉
No.93 砥ぎ澄ます秋(1) 2006.11.25

 失敗続きでなかなか進展しない制作に、少し息切れしそうなこの秋です。
 今年は暖かい気候のせいであまり冬が近づいてくる気配を感じないのだが、制作に必要な材料を買いに近所の店へ出かけてみると街路樹のケヤキが紅葉真っ盛りであることに気付いた。
 青い空と白く輝く雲を遠景に、赤と黄色の葉がヒラヒラと流れて行くのを自転車で走りながら見て、晴れ晴れと健やかないい気分になる。わずかな街中の自然でも人の気持ちに作用する力は大きく、息切れしそうな気持ちのこともしばし忘れてしまった。(近頃の運動不足で身体の方は少し息切れしてたけど‥。)
 家で篭りながらあれこれと作ることを考える毎日で、何かイベントの類に顔を出すこともなければ、たとえそんなチャンスがあっても自分の気持ちが受け入れる状態にないというのは、まさに“ゆとり”が無いということだろう。時にもらえる友人からの誘いも、楽しむことに準備不足な気分と余裕の無いフトコロ事情に、やや気が進まないでいる。
 今の自分の状況に「遊んでいる場合じゃない」という焦りがありながら、そのくせ睡眠時間はしっかり採っているから、「頑張ってる」とか「大変なんだ」なんて自慢げな愚痴を披露し合って憂さ晴らしする‥といった会話への参加資格は持たないし、共有できる話題がことのほか減少している気がして‥、どうも誰かと会うことさえ遠ざけているのだ。
 まぁそれでも話を聞く側に回ることで誰かの力になるのだから、人を遠ざけて制作仕事ばかりしてはいけないな‥と反省する。
 
 〔最近一人で反省することばっかりで、気持ちが磨り減ったかな‥〕
 この春以降、自分の絵の額を作ったり、木工関連の仕事を引き受けたり、友人の家具作りを手伝ったり‥と、あまり絵を描けていない今年は、絵筆の先が磨り減る代わりに木を削り・加工するための鑿(ノミ)や鉋(カンナ)などの刃先がよく磨り減った。
 
砥ぎ澄ます秋(2)へつづく 
 

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