人生という日常の合間に見つけた平凡な感動や、過ぎ去る時間のぼんやり思惑。 人生紀行

 
No.39 気まぐれに瀬戸物(1) 2004. 9.17

 秋が来た!
 秋はいい。案外一番愛する季節なのかもしれない。
 開け放す窓からスウーッと涼しい風が流れ込む。小さな部屋の窓の外に澄み渡る青空が広がっているのが見えて、沸々とある感情が心の奥の方から湧き出してくる。ソワソワとした気持ちになって、やるべきことも手につかない。
 〔う〜、どこかへ行きたーーーい!〕秋の季節がやってきて、それまで眠っていた(?)旅の虫がうずきだしたのだ。
 勝手な自論だが「旅の季節は春と秋」だ。「なぜか?」と問われても困る。わけのわからない衝動が突き上げてじっとしていられないという感じだ。理屈じゃない。
 理屈じゃないとは言っても「一年の間で最もホルモンが活発に分泌されるのは秋」であり「ホルモンは活力の源」という理屈の通りで秋になると勝手に湧き出る感情だから、‥やっぱり理屈じゃない。(ちなみに「ホルモン噴出季節」の秋は、じつは恋の季節でもあります。春に旅へ出たくなるのは‥よくわかりません。これも理屈じゃないんでしょう。)
 そんな感情に押されるがままに「せともの祭りへ行こう」と突如思い立ったのが午後3時過ぎだった。せともの祭りは午後7時までの開催なのだから、移動時間を考えたらもうヤバイ時間だ。会場にたどり着いても「楽しむ間もなく終了」となるのはあきらか。しかし、そんな正常な理屈も「湧き出る秋の旅心」の勢いに吹き飛んでしまうのだから、人間の感情(≒ホルモン)とは恐ろしいものである。
 とにかくグズグズしている時間は無い(←思い立つまではグズグズしてたくせに)。車に一人乗り込んで瀬戸市へ向けて走り出す。
 「せともの祭り」とは愛知県瀬戸市で毎年9月第2週末に開催される「せともの」の展示即売会だ。「せともの」という「陶磁器製品の総称」はこの瀬戸市という土地名からきている。瀬戸市には陶磁器を作っている窯元が今も多く存在し、多くの陶磁器作家が制作と発表の場を求めて集まる場所だ。そんな窯元の陶磁器製品や作家たちの陶磁作品が、ズラリと並ぶ露店で普段よりも格安で販売されるというのが「せともの祭り」である。
 
気まぐれに瀬戸物(2)へつづく
 

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