人生という日常の合間に見つけた平凡な感動や、過ぎ去る時間のぼんやり思惑。 人生紀行

 
夢の入り口
No.133 夏の夜の夢(1) 2010. 8.22

 寝ている間に久しぶりの夢を見た。正確には夢の内容を記憶に留めたまま目が覚めた。
 人の見る夢なんてかなりどうでもいい話なのはもっともだろうが、私には印象深いストーリーだったので、書き留めておこうと思う。
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 全くもって夢らしく、ストーリーは突然始まっていた。
 どういう経緯かはわからないが、私はある家族からの依頼を受けて、彼らのお宅へ訪れたところから始まっている。その一家の人全員は初対面の人たちで、その家族からの依頼と言うのは「2人の娘と奥さん」を殺して欲しいというものだった。しかも、「2人の娘と奥さん」は自ら死ぬことを望んでいると言うのだ。
 私は「2人の娘と奥さん」の自殺幇助(?)を依頼され、その願いを叶えるべくにここへ来ていた。その3名が死ぬ・殺されることを家族は了承・希望しており、その本人=3名とも殺されたがっている。そんな状況から夢は始まっている。
 ‥まぁ、なんとも夢らしい「ふざけた状況」なわけだ。しかし、夢の中ではこの状況に疑問をもつことも、“夢の中の現実”に抗うこともなくどんどんとストーリーが進む。
 そして私はその3名の願い(死ぬ)を叶えるべく、銛を手にして家族に招かれ上がっていた(銛:もり 漁でつかう槍のこと)。銛は家族が用意してくれたのか、自分で持参したのかはわからないが、次のシーンでは少し薄暗い隣室で、私はためらうことなく娘さんの1人を銛で突き刺す。私が。(夢ですよ)
 銛を勢いよく胸に突き刺さして、ズブブと胸に入り込んで行くその感触を両手に感じる(夢の中でもこういう感覚はなぜかリアル)。あまり血は出ないが、服の上からジュワっと血が染みて、娘さんの顔が苦痛にゆがみ、その場に両膝をつき、やがて静かに息絶えた。そして次の娘さん、そして奥さんと順番に、まるで同じフィルムを繰り返すように、銛で一突きして殺すのだ。
 すぐ隣に居る残りの家族は、彼女らの死も、私の今やった行いにも一向に意に介してないようで、淡々と日常の暮らしをしていた。そして、私は一家の主に挨拶をしてその家を後にするのだった。特に謝礼や金品を受け取ることは無かったが、私は死を願う依頼人の望みを叶えることができて満足していたように思う。
 しかし、私はその家を出た直後にハタと「殺人者である自分」を自覚し大きな後悔に包まれてしまう。
 “死にたい者の依頼で、本人・家族同意の上殺した”と、いくら世間に弁明しても自分は「殺人者」になってしまうのである。今の社会も他人も、私のこの行いを簡単には許しはしないだろう。そんな自分の置かれた状況に気付いて青ざめ、うろたえる。
 
夏の夜の夢(2)へつづく 
 

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