人生という日常の合間に見つけた平凡な感動や、過ぎ去る時間のぼんやり思惑。 人生紀行

 
試し塗り
No.130 春 イロイロ(5) 2009. 9. 4

 赤・青・緑・黒・・、どの絵の具の色もチューブから出した原色が少し白を混ぜたような感じの色に見える(私の目において)。その白の混濁のせいだと思うが、2つの色を混ぜ合わせると、理想的な混色からは大きくずれた(濁った)色になってしまうのだ。 
 
 〔うむむ‥これは‥〕 
 小学生が購入する絵の具は「水彩絵の具」と言われる物の中でも「透明水彩」という種類ではなく、「不透明水彩」に相当するものだってことを改めて見直した感じだ。
 「透明?不透明?何それ?」と思う人も多いと思うので、そもそも絵の具とはどういう物なのか、少し簡単に説明してみる。
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 一般に「水彩絵の具」とは、色の元になる顔料と、紙などの下地に定着させる水溶性の樹脂成分、それらを水で混ぜ合わせた物」と簡易には説明できる。(ちなみに、この樹脂と混ぜる水(溶剤)の性質を変えてやれば、油絵の具、アクリル絵の具、油性・水性ペンキなどと呼ばれるものに変わってくる。)
 基本的に絵の具は厚く塗れば下の色を覆い隠すものだが、水で薄く延ばして塗ったときや、色と色を混ぜた(混色した)ときは、下の色を覆い隠す隠蔽力の強さや混色の様子が絵の具のメーカーやグレードによって異なり、その違いから「透明〜半透明〜不透明」という具合に分類される。殊に下の色がよく透けて見える絵の具が「透明水彩」と特別に呼ばれ、それ以外は単に「水彩」と言われることが多い(※)。
 絵の具の透明/不透明を分かつのは、色の元となる顔料粒子の大きさや樹脂成分などの性質による。「透明水彩」の顔料の大きさは、より細かく均一で、混合される樹脂も濁りの少ない高級なものになるので、容量あたりの価格は高いのが一般的。
 反対に、不透明の絵の具は透明のものと比べると顔料は大きく不ぞろいで、その他の原料も総じて安価。そのなかでも顔料や樹脂のグレードを下げたり、他に増量剤を加えることで、さらに価格を下げてあるものもある。
 顔料や樹脂のグレードを下げたり代替品を使用した絵の具の場合、“退色”といって紫外線による変色(色抜け)が時間と共に顕著に現れたり、保存している絵の具が腐ったり‥、などが起こってくる。
 それから増量剤は、不透明性を増す白色の物質なので、多くは隠蔽力(下の色を覆い隠す力)が強くなり、チューブから出した絵の具は「透明水彩絵の具」よりも鮮やかに見えるが、混色においては理想的な減色混合が再現できない。
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 ※注:透明水彩だけが特別に性質が異なったり明確な数値基準があるわけではなく、相対的に透明性が高い部類に入ると言うだけで、「透明水彩」と掲げた絵の具でもメーカー間で“透明”の現れ方に差がある。不透明系の絵の具でも、多量の水に溶いて使えば透明性は増すので、透明〜半透明〜不透明における相対的・感覚的な分類である。
 
 この学校で購入する絵の具は、メーカーによると「半透明の絵の具」という分類らしい。私の見る限りでは、顔料は割と細かいものが使用してある感じだが、増量剤が多く入れられており、不透明に近い絵の具のように思う。2色以上の絵の具を混ぜると、増量剤の影響で濁った感じの色になりやすく、理想的な色作りを行うには多く色を混ぜない・混ぜる色を選んだり限定したりするなど、少しの工夫と諦めが必要のようだ。
 
春 イロイロ(6)へつづく 
 

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