人生という日常の合間に見つけた平凡な感動や、過ぎ去る時間のぼんやり思惑。 人生紀行

 
柿
No.121 誰がために実は染まる(2) 2008.10.28

 極早生ミカンは9月末〜10月の時期しか出回らない露地もののミカンで、“青ぎりミカン”とも言う。しかし、木に実付いたものを早く出荷したものではなく、ちゃんと極早生ミカンの品種の木でそれ用に育ったもののようだ。
 昔は酸っぱいものが多かった極早生ミカンだが、私と同じく「極早生ファン」が多い証だろうか?品種は年々改良されており、特に早生品種の競争は盛んになっている。
 近年では「ゆら早生」「日南の姫」「坊ちゃん早生」「いさお早生」と新しい品種が次々と開発されて、その味を市場で競っている。
 最新の登録品種の一つは「西南のひかり」(2007年:農林水産省)。
 これは糖度が12.1〜14.6と、最高値では完熟メロン並みの糖度を誇る極早生ミカンだ。早速でも1つ食べてみたいところだが、2004年に登録された「いさお早生」(佐賀県)が昨年2007年にやっと市場デビューを果たしたので、「西南のひかり」を口にできるのはあと2・3年先のことになるだろう。
 極早生ミカン=青いミカンと聞いて、以前食べた時の酸っぱさに懲りて、それ以来口にしてない人もいるだろうが、上述のように最近の極早生ミカンは非常に味が良くなっているので、極早生ミカンを敬遠していた人も一度食べてみることをオススメする。(確実に品種指定で買うにはインターネット販売がよろしいようです)
 外皮に爪を立てた瞬間、あたりに広がる極早生の青く芳醇な香りが、爽秋の情景となって胸に刻まれること間違い無し!あの極早生ミカンたちはみんなに食べられるのを今か今かと待っているゾ!
 
 ‥。ちょっとオーバーな言い方になった。別にミカン農園の親類がいるわけでもなんでもないが、ミカンの実が甘さを増して色づくのは我々動物達に食べてもらう為の植物の変化で、我々に発するメッセージの1つだ。
 地に根を張って自由に移動できない植物達は自分の子孫となる“種子”をより遠方へ・多く・確実にばら撒く方法を永い間に編み出し進化し続けてきた。ミカンだって例外じゃない。
 
誰がために実は染まる(3)へつづく 
 

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