人生という日常の合間に見つけた平凡な感動や、過ぎ去る時間のぼんやり思惑。 人生紀行

 
エナガ
No.102 バードカービングに恋して(6) 2007. 6. 2

 でも実際にはそこに“命”なんてものは無い。第三者から見れば鳥型を模した木塊である。素材の木だって呼吸して生き続けている云々言うこともあるが、伐採・製材・乾燥を経た木材に命は無いのだ。
 得ている生命感は彫り進めた者が想像するファンタジーであり、時間をかけて得られる気持ちの変化≒感動であり、それがバードカービングの魅力・醍醐味なのである。
 現在のカービングで使うグラインダーは“加工精度を上げ、初心者への門戸を広げる”という、それでも時間のかかる木彫範囲内で一つのバランス(妥協点)を見出した結果のように思う。
 〔バードカービング業界はやっぱりウマいことやってたか‥。〕
 
 そう言えばバードカービングとは全く趣きが異なるが、キャラクターフィギュアというものがある。そこにはいわゆる“美少女萌えフィギュア”というものも含まれ、様々なキャラクターに似せて精巧に作られた立体ミニチュア人形のことだ。美少女萌えフィギュアとなれば扱う店はやや限られるが、有名アニメ・漫画のフィギュアとなると小さなおもちゃ屋さんでもほぼ置いてあり、近頃ではとても隆盛なクラフト分野といえるだろう。芸能人のフィギュアも製造販売されるのだから、バードカービングよりもメジャーで身近なモノだ。
 細部にまで忠実に(かつイメージを崩さずに)作られたフィギュアは、原作やアニメを知らなくても動き出しそうな気配を感じさせるもので、実際の動きあるアニメを見たことがあればそこに感ずる“生命感”も大きい。

 店頭に並ぶ量産品フィギュアは樹脂成型で複製されるものの、その出来栄えから原型制作にさぞかし時間がかけれているのが伺い知れる。‥と、なれば当然、原型制作をした“原型師”と呼ばれる人たちが得ている“生命感”はとても大きいだろう。2次元のアニメキャラクタを3次元へと作り出す過程で、そのキャラクターに強い生命感を得て惚れ込んで行くのは当然の成り行きだ。
 ただ、その制作対象(キャラクター)に性的魅力が含まれる場合が多いという点や多くはミニチュアであること等がバードカービングとは大きく異なるのだが、作る過程では似たような面白味・醍醐味を有するから
 〔20年後あたりにはNHK教育で「アニメフィギュア制作講座」なんてのをシリーズ放送する日が来るんじゃないか?〕と、密かに思う。
 
 ともかく、美少女(美男子)フィギュアに興味のない人でも一体本気で時間をかけて完成させれば、そのキャラクターの虜になる‥という予感がするし、作ることはそういう“魔力”を持っているものだ。
 
バードカービングに恋して(7)へつづく 
 

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