人生という日常の合間に見つけた平凡な感動や、過ぎ去る時間のぼんやり思惑。 人生紀行

 
コンサートのチケット
No.85 涙のライブコンサート(2) 2006. 6.19

 そして数日が過ぎてコンサート前日。私の極めて薄情な期待を裏切るように「行きたい」という人が遂に見つけられず、私はI氏と一緒にパフィーのライブコンサートへ行くことになった(お互い友達少ないのね‥)。
 「人生初のコンサート☆」という普通ならワクワク&ドキドキものの予定が確定したのだが、近頃はお金の支払いに消極的であるが故に、それなりの支出が予想されるこの一大イベントに未だ消極的になっている私なのだ。
 〔うー、悲しいような嬉しいような‥。罪悪感を伴う高揚感というか‥。〕
 最近は娯楽にお金を使うときはやや混乱した感情に陥りやすい。
 〔せっかく決まったコンサートだというのに、俺はなんというツマラナイ奴なんだろうか‥。むーーー、行くからには楽しまなくては‥初めてのコンサートなんだし、たまには贅沢してもいいじゃないか。今回は清水の舞台から飛び降りるつもりで。いや、ギアナ高地のエンジェル・フォールから一糸纏わぬ姿で飛び出すつもり!いやいや、スペースシャトルから命綱を外して蒼い地球へ真逆さまに飛び込むつもりだー!!ええぃ、後は野となれ山となれ!!〕
 そうやって気持ちを高めながらコンサート当日を迎え、会場への電車に乗り込む。
 〔考えてみれば、これまでこういうミュージシャンのコンサートとかに行くことがなかったけど、周りのみんなはそれなりに誰かのコンサートへ行ったりするんだよなぁ。楽しいのかな?きっと楽しいんだよな‥。CD聞いたりテレビ観たりするのとは比べ物にならない感動があるんだろうな‥。〕
 何かで見たような記憶の中にあるライブ・コンサートの様子を想像してみても、観客側の詳しい様子はあまり判らなくて、自分自身がどういう空間にどんな姿勢でたたずんでいるのかさっぱり想像できない。
 〔そういえば、ゆっくり座って聴いてたら怒られるんだろうか?暗がりの中で頭上に腕を振ってジャンプした方がいいのかな?‥うーん、きっと会場での一体感が楽しいんだから、一緒になってジャンプしないとな。あーでも、自分自身そういうノリは得意じゃないしなぁ‥俺はうまく楽しめるんだろうか?(自問)〕
 
 平日の夕方で、電車内は学生の姿が増えてきた。20歳前の彼らを横に見て、ライブやコンサートを楽しむことなくいつの間にか私は学生を卒業していたことに気付く。これまでコンサートに行かない代わりに何を得てきたのか‥少し振り返ってみる。
 30歳を過ぎておきながら、どうやってライブコンサートを楽しめばいいのか分からない自分が少し恥ずかしくも思ったが、30過ぎてゾウにもラクダにも乗ったことない奴だって沢山いるわけだし、そこんとこは人それぞれだ。出費にはなるけれども、今日こんな機会をわざわざ提供してもらえたI氏とパフィーに感謝しなくては。
 
 そうこう考えてる間に、混雑してきた電車は目的の駅に到着した。
 
涙のライブコンサート(3)へつづく 
 

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