人生という日常の合間に見つけた平凡な感動や、過ぎ去る時間のぼんやり思惑。 人生紀行

 
ライブコンサート会場
No.84 涙のライブコンサート(1) 2006. 6. 5

 絵の展示・発表をしたいという想いに従って密かに(日々考えるようなことなのだが‥)見積もりを立ててみた。誰かが私の個展を開いてくれるわけでもないので、自分で必要なものを準備・用意するとなればお金がかかるものは多々ある。
 曖昧ながらも会場費用、大体のDM印刷・送料、かなりハッキリしている絵の額を作る材料費‥、そんな感じで自ら導き出した数字には思わず閉口した。
 
 今の自分には“先立つもの”が足りない。
 〔会場に案内状‥それ以前に額にもたどり着けない‥。全然駄目じゃないか、ガクッ(額)‥。〕
 一人でつまらない冗談を思いながら、大きくため息をついてゴロンと横になり、天井を仰ぎ見た。
 〔はぁ‥どうしようかなぁ、国民年金とか電話代とかの支払いもあるし、展示はまたもう少し後かな‥。なにかいい方法はないだろうか‥〕なんて考えてたら、友人I氏から電話があった。
 『チケットが余ってるんだけど、コンサート行く気ないですかね?』
 「え゛‥。」
 抽選予約で買ったチケット2枚で彼は奥さんと一緒にコンサートへ行く予定が、その奥さんが妊娠でお腹が大きくなり、混雑するコンサートは危ないから一緒に行けなくなったと言うのだ。
 
 「あのー、お金ないんだよね。チケットは4・5千円はするんでしょ?無理無理、駄目駄目。ちなみに、コンサートって誰の?」と私。
 『パフィー‥。』
 「パフィー!?‥パフィーいいなぁ。はっきり言って好きなんだよね。でも、お金ないからいいや。行かない(きっぱり)。」
 『いや、行こうよ。いいよーパフィー。』
 「いや、行ってみたい気持ちはあるけど、コンサート行って楽しんでるようなお金ありませんから。それに俺コンサートとか行ったことないし‥。」
 『え‥。いや、だったら尚更。今回逃したらもう行けないかもよ。パフィー好きなんでしょ?これ以上のチャンスは無いよ。』
 「え‥。いや、チャンスとか関係ないし。コンサートへ行くほどに好きってわけでもないから。」
 『いやいや、これは運命。初めてのコンサートが大好きなパフィーだなんて、なんという廻り合わせ!行かなきゃ!』
 「いやいや、運命でもなんでもないですから〜。遊ぶお金がないから、遊ばない。それだけ(きっぱり)。ここでお金使って、代わりに誰か俺の国民年金払ってくれるのかと?」
 『ま・ま・ま‥、そう言えばそうですけど、またそのうちお金は入ってくるでしょ?』
 「う・う・う‥、しばらく余裕ができる収入は‥予定ないんだ〜。節約して過ごさないとね。当日は電車賃も要るし、ご飯とかも食べたらトータルで結構な出費になるから‥。」
 『むー、晩飯くらいおごります。チケット代も少しくらいはおまけします。それならどうです?』
 「ム゛ー、いや、そういうわけにもいかないよ‥。」(自分のが年上)
 
 そんなやり取りが電話で続いて、私がパフィーコンサートへ一緒に行くかどうかについては結局“保留”ということになった。彼の敏腕営業力なのか、誘いを断り切れなかった私が弱いのか‥。
 ともかく予定が空いている他の人にも声を掛けるそうなので、それで行き手が着かなかったら私が行くということに交渉は落ちついたのだ。
 〔コンサートかぁ‥一度くらいは行ってみたいけど、今は余裕ないんだよね‥。誰か他の人が喜んでお金払って行ってくれるなら、その方がいいよなぁ。〕
 
涙のライブコンサート(2)へつづく 
 

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