人生という日常の合間に見つけた平凡な感動や、過ぎ去る時間のぼんやり思惑。 人生紀行

 
分解部品
No.80 緋毛氈と伊賀まんじゅう(5) 2006. 4.17

 さあ、隠密(?)調査も終わり、こちらに帰省していた依頼主との打ち合わせも済んで、いよいよひな壇制作の作業に入った。
 「組み立て式」「コンパクト」「木目調」「あとは蜂須賀のセンスにおまかせ☆」という要望に沿ってデザインする。そして、いつものように自宅の軒下作業場にわずかな道具を揃え、刃物を研ぎ澄ました。
 〔つまらないものは作りたくない。かといって時間をかけすぎるのも‥。〕木に向かう全ての瞬間に湧き出る葛藤を経ながらも作業時間はどんどん膨らんでいく。
 あっという間に2月中旬が過ぎて、まだひな壇は完成していなかった。
 〔今日は、2月‥?あわわわ‥、2月っていつもより日にち少ないじゃないか!?3月3日の雛祭りまで時間がないッス。ヤバイ。〕
 完成したひな壇の引渡しは、依頼主の友人が暮らす広島への小包発送となっている。もう一刻でも早く発送しないと‥ひな祭りを過ぎてしまう。
 
 3月1日の夜明けに最後の組みあがりを確認し、ひな壇と束の間の記念撮影。それから厳重な梱包を施してひな壇を発送できたのは、その日の郵便窓口が閉まる5分前だった。広島には翌日3月2日中に配送できるとのこと。
 〔ふへぇ〜、ひな祭りに間に合ってよかった〜。それに、拙い腕なりにまずまずのひな壇が仕上がって、こんな嬉しいことはない。現金収入含め、いい仕事させてもらえたことに感謝!〕
 
 お雛様をまじまじと観察し、ひな壇を自らの手で作り、気持ちの上でも物理的距離においてもこれまでの人生で最もひな祭りに接近できた今年だったのだが‥3月3日は特に何かあるわけでも無く、普段の平日と全く変わりなく、大変地味に過ぎていった。
 
 ‥いや、そうだ!1つ忘れていた。
 男だけの兄弟でも、我が家やでは桃の節句にちなむ習慣が一つだけあった。ひな祭りといえば「伊賀まんじゅう」だ。
 
 「伊賀まんじゅう」を知ってるだろうか?
ひな壇組み換え
 
緋毛氈と伊賀まんじゅう(6)へつづく 
 

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