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No.79 緋毛氈と伊賀まんじゅう(4) |
2006.
4. 3 |
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〔結婚してなければ娘も姪っ子もいません。実はひな壇を木で自作しようと思って構造を見に来ました。〕‥と正直に言ってしまおうか瞬間的に悩んだが‥やめておいた。
買う気が全くないと重要な情報が引き出せないことは明白だし、この販売員が制作アドバイスしてくれるとは思えない。冷やかしに不服なお店の人から「素人が簡単に真似して作れるもんじゃない。」とか「大した物なんかできっこないよ。」みたいになじられてもお互い気分が悪いだけだ。
〔結婚もしてないのに娘が生まれたことにするのは、正直言って情けないな俺‥。彼女だっていないじゃないかヨ‥それに靴、穴空いてるし!〕
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そして店長を待ってる間の会話の流れで「市内で娘と妻の3人暮らし」「今の住まいはわりと狭い」「人形だけは妻の義母が現在所有」「人形が手元にないから詳しいことは分からない」「妻の実家は豊田(隣の市)」ということになった。
〔あー神様、今日わたくしめは私利私欲の為に幾つものウソを塗り重ねました‥。平気な顔して。〕
待つこと数分。社長とやらがようやく戻ってきた。奥にあるファイルを引き出して見ている。
言われた値段は、さっきの壇だけの値段は約9万円(中サイズ)、元のトータルセットの半額ほどだ。緋毛氈を敷くタイプは壇がスチール製の骨組みだけなので、2万円からと木製に比べてずっと安い。
お店の方がまとめること曰く「木目調の壇だけのお求めの場合、15万円くらい予算を見ていただければよろしいかと‥。」とのこと。〔ふ〜ん‥。〕
住所と電話番号を聞かれたが「また来ますので」とそれは笑顔でかわしておいた。
店員さんと社長さんに“またの御来店”を期待されながら、お返しの笑顔で見送られて(やっと)人形店から無事脱出することができた。
〔ふーーー、作戦終了。また一つ未知なる世界を知ってしまいました。〕少しの後ろめたさを背後に感じながら穴あきの靴で自転車にまたがり家路に着くのでした。
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