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No.68 期限付き青春旅行(6) |
2005.11.12 |
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浅間大社・湧玉池の側に作られた水汲み場で、湧き立ての清水を口に含む。軟水のスーッと染み入るような独特な口当たりと、ちょうどいい水温(13℃)に喉を潤した。
「おいしい!」
勢いよく池から流れ出る川の水は冷たく、池には透き通る緑の水草(バイカモ)が揺れて、近くに設けられた広場は市民の愛する憩いの場になっている。私もそこに遊ぶ富士宮市民に混じって、富士山を眺めながら少しばかりくつろいだ。
柿田川と湧玉池、富士山と浅間大社‥、図らずともそこに暮らす人達の富士と湧水への愛情を感じられて旅のテーマができたようで区切りがついた。 |
穏やかな気持ちがこみ上げてきて、ようやく陽も傾きだしているので帰宅の途に着こうと思う。
静岡県を縦断して西へと向かう東海道の列車は、茶畑の広がる丘陵地を走り抜けていた。
向かい合わせの席に座った人達は外国人のようで、スペイン語らしき話し声が聞こえている。
車窓から西日を受けた茶畑が黄色に輝くのを眺め、レールの振動に紛れるようにスペイン語が聞こえてきたとき、遠くへ来たような懐かしいような不思議な気持ちになって今日一日を振り返る。なにげない一瞬の情景が脳裏に深く刻まれる瞬間だった。
帰れる場所≒愛する土地のある有り難さに幸せを感じて、一日だけの期限付き青春(18きっぷ)旅行は終わった。
誰かに出会ったわけでもない一人ぼっちの小さな旅だったけれど、多くの静かな感動に出会えた旅に心の風邪もやわらいだようだ。「また明日から一歩一歩進めて行こうではないか。」
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