人生という日常の合間に見つけた平凡な感動や、過ぎ去る時間のぼんやり思惑。 人生紀行

 
始発電車
No.63 期限付き青春旅行(1) 2005. 9.12

 「おもえもそろそろいい歳なんだから、ゴロゴロしてないで青春でもしてきなさい。」
 という想いは一緒ではなかったが(大いに抱いているとは思うが‥)、親が一回分の“青春18きっぷ”をくれた。聞けばどうやら使う機会を得ないまま使用期限が迫っているのだ。いらないなら捨てると言う。
 “青春18きっぷ”とは知っている人も多いだろう、JRが発行するJR線が1日乗り放題に利用できる切符で、期間限定で販売される「とくとくきっぷ」の一つ。一枚で5回(人)分使え、乗れるのは快速や普通車両のみ。年齢制限などはないが、販売も利用にも期間があり、今回もらった切符は9月10日までの使用であった。
 〔行きたい場所かぁ‥〕期限が迫っているのに最近の私に行きたい場所がなくて困ってしまった。
 かねてより惹かれていた川にある温泉へ‥と思っていたのだが、よく調べてみたら今は雨の影響で入浴できないらしく、このきっぷの使用期限前には回復しそうにないのだ。
 
 唯一行きたいという温泉は増水して、今は入れない‥。
 欲求を引き出す元となる観光情報をあさってみても、今はピンとこない‥。
 離れた友人にでも会いに行こうと考えてみるが、今は気がおこらない‥。
 どこでもいいから一緒に電車旅をしてくれる人も、今はいない‥。
 あてのない国内一人旅も、今はあてなく彷徨いたくない‥。
 
 〔はぁ‥。どうしたものか‥。〕
 降って沸いた旅行のチャンスを目の前にして、精力的になれるものが最近無い自分が嫌になりだす情けなさ‥。これで、切符を使わずに捨ててしまったら本当に情けない奴だ。
 〔とにかく、電車に乗って知らない土地の景色をみるだけでもこの機会を活かさねば‥。〕
 などとまぐれでもらった青春18きっぷ一枚にそれほど悩む必要はないのだが、あれこれと数日間考えた挙句やっと幾つかのポイントやモチベーションを絞り出した。
 「JR沿線・消費額抑える・富士山・柿田川」である。
 あまり端から気もない場所へ行くのに、お金は使いたくないし景色を堪能するだけでも十分だから、JR沿線を離れないことにした。そこで線路からの景色で気になるといえば富士山が頭に浮かんだのだ。(元々景色見るの好きだし)
 富士山というキーワードに伴って、富士山の清水が湧き出る川のことを思い出した。調べてみたら沼津市と三島市の間にある清水町の「柿田川」らしい。ずっと昔にチラリとテレビで見ただけだったと思うのだが、記憶の泉は意外に豊かなものだ。(インターネット検索は便利な泉です。)
 
 やや「青春18きっぷ」の名に恥じるような心境ではあるが、ようやく気が無いなりにもささやかな初秋の旅の計画がまとまった。
 
期限付き青春旅行(2)へつづく 
 

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