人生という日常の合間に見つけた平凡な感動や、過ぎ去る時間のぼんやり思惑。 人生紀行

 
No.40 気まぐれに瀬戸物(2) 2004. 9.26

 私の家から瀬戸市までは、車でおよそ2時間はかかる。終了の7時までには時間がないから高速道路を‥と思ったがお金にも余裕がない。まぁ自分一人なわけでもあるし、秋のドライブを楽しみたい気持ちもあるし‥。やはり一般道でのんびり(もしていられない)ドライブである。
 しばらく走って市街を抜けると開放した車の窓からは秋の空気と共に秋の気配に染まる景色が広がっていた。こうべを垂れて黄金色に輝く田や、農道を散歩する犬を連れた人、傾いた柔らかな日差し‥。見知らぬ町や物に包まれることは、旅気分を盛り上げる重要なエッセンスではあるが、時間をかけて移動を体感することも旅の一つの重要なエッセンスであろう。
 やがて瀬戸市までやって来た。市街を流れる瀬戸川沿いに屋台の軒が連なっている。大した移動距離ではなかったが、見知らぬ街に降り立ったこともあれば、祭りという雰囲気で今日はもう充分旅気分である。
 会場についたときには午後5時をとっくに過ぎていて、あたりは完全に夕暮れだが、宵の涼みと最後の値下がり品を狙う買い物客が大勢で賑わっていた。
 陶芸をたしなむわけでもなく、特に陶磁器好きというわけでもない私だが、せともの祭りは過去何度か来ている。でも何かを買った記憶が実は無い。今回も購入する気持ちは「どこかへ置いて来た」ので手ぶらで帰ることになるが、私にとっては「祭り」という雰囲気と何か変わった陶磁器製品が見れることが楽しいのだ。まぁ、しいて言わせてもらえば「個性的な作品、その価格」などを見て、来たるべくコーヒーカップ購入に備えた陶磁器の見聞を広めておこうというのが今回の趣旨と言えば趣旨である(いつか、いいカップを手に入れたいなぁという願望があるのです)。
 しかし、そんな趣旨があろうと到着が遅かったので全ての店をゆっくり見て回る時間は既にない。
 仕方がないので、一軒一軒の品物をじっくり見ていくことはやめて、ザザーッと全ての店を簡単に覗いてから、来た道を戻りながら気になった店を再度訪れるという方法で見て行くことにした。
 行き交う人のなか、足早に各店の品に目を通す。色々ある。陶器、磁器、手捻りのもの、ロクロのもの、機械製陶、手付け着彩、印刷柄、スマート、無骨、実用品、装飾品、かわいい、渋い、安い、高い‥etc。あまりに多くて、全てザーッと目を通すだけでも大変。根気よく品物を見て行こうとしたらかなりの重労働だ。
 
気まぐれに瀬戸物(3)へつづく
 

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