人生という日常の合間に見つけた平凡な感動や、過ぎ去る時間のぼんやり思惑。 人生紀行

 
No.34 縁卓を囲んで(4) 2004. 6. 3

 「上々」の店内は和風を基調としながらも、前衛・奇抜なアクセントを所々に配し、とても面白く味わいのある空間だ。なんでも店長さん自ら内装の工事などをほとんど手がけたというのだから器用な方である。
 店長のSさんから座卓の設置場所や使用パターンなどデザインに関わることについて話を伺うと、やがてお互いの話になった。今日初対面の店長さんと私であるが、不思議なことに幾つかの接点があることがわかった。
 まず私と同じ大学に通っていたということ。一つ年下だから、同時期に在学していたわけで、大学構内のどこかですれ違っていたのかもしれない。
 ‥まぁ、これぐらいはよくある話としても、次に驚いたのは専攻が生物(店長さん)と美術(私)と異なるのに同じ「美術専攻のある先輩」にお互い世話になっていることであった。その先輩の名前が店長さんの口から出たときは素直に驚いた。そして、一番の驚きは「人生紀行No.30」で書いたガンで亡くなった私の友人と大学で同級生だったというのだ。「No.30」をここに掲載直後のことだったから「驚き」というより何かとても感慨深い気持ちになるのでした。
 袖振り合うも他生の縁‥、という言葉はこれとは意味が違うけれど、意外な縁をもつ不思議な出会いに胸躍る気持ちをおぼえながら「上々」での打ち合わせを終えた。
 思えば彼女(病で亡くなった友人:M)と大学は同じであったが、初めて会ったのは「タイ・バンコク」という巡りあわせであった。なかなかのしっかり者で、一年先輩となる私が力になれるようなことはほとんど無かったことを思い出す(逆に諭されることのが多かった気もする)。
 「短命ではあったが、彼女が残したものは決して少ないわけではない。」と‥、今回の出会いを奇遇なものにしたMの顔が脳裏に浮かんだ。
 
縁卓を囲んで(5)へつづく
 

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