人生という日常の合間に見つけた平凡な感動や、過ぎ去る時間のぼんやり思惑。 人生紀行

 
No.31 縁卓を囲んで(1) 2004. 4. 29

 友人の一人から「机を作ってくれる人を探している。」と相談をもちかけられた。どうやら、ある居酒屋で使用する座卓の制作依頼らしく、人伝いに私の所に話が回ってきたのだ。
  一応私は大学で木工制作を集中してやっていたから、友人の中で「机→木製→木工制作→はちすか!」ということだったのだろう。現金収入の見込める仕事を私に回してくれたことは誠にありがたく一瞬浮き足立ったが‥、冷静に考えてみて断ることにした。
 指定されたサイズが150×90pという大きさの克服、飲食店で使用する為に求められるクオリティーの克服、迅速に作業をこなす為の設備・環境の克服、制作にかかるコスト(材料費+労働に見合う収入)の克服‥、あまりにも克服すべき課題が多い。
 今の私には道具(木工機械)が無く、それを補う技術・ノウハウも充分に無く、安く良い木材を調達できるルートも無く、まして大きなものを作る為の場所が無い。足りないものを工夫で補って制作すれば、時間がかかり期限に間に合わないかもしれないし、多くの時間を注ぎ込んで見合う収入でもない。設備や場所を借りれば全くただで済むわけもいかず、自宅と作業場が離れていては移動の費用・時間などが無駄にかかる。
 ‥と以上の様なことがザザーッと頭に浮かんで「俺には無理だ。他へ回してくれ。」と話を持ってきてくれた友人にすぐ伝えたのだが、私もわずかな経験でものを言っているに過ぎないことにふと気づき〔道具・技術・場所・コストを克服する為に具体的なアイデアと詳しい情報を探ってから判断するべきか‥。〕と思い直して「すこし考えるから2・3日の時間をくれ。」と伝え直すのだった。
 
縁卓を囲んで(2)へつづく
 

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