人生という日常の合間に見つけた平凡な感動や、過ぎ去る時間のぼんやり思惑。 人生紀行

 
No.27 2月29日の偶然(2) 2004. 3. 14

 お互いに現状を簡単に紹介しあって再会に喜び合う。彼は現在となり街の高校で美術講師をしながら、週末はこの画材屋で開かれている絵画教室でも講師を勤め、忙しくとも充実した日々をおくっているようだ。
  今日はその絵画教室の講師の日でもあり、教える生徒の作品展示会の最終日でもあった。店に隣接するかたちで、ギャラリースペースがあり私が店に来たときにはもう展示会の後片づけが終了して、あたりにはホッと一息ついて談笑する若い人(高校生)が数人見えたから、みな彼の教え子なのだろう。
  先生としての彼は充分に頼もしく見えるのだった。
 Oは自分の絵画制作の方も続けているらしく、今回の展示会に生徒に混ざって出品したものを少し見せてもらう。最近はもっぱらテンペラ画を描いていて、やわらかな感じのやさしい絵であった。二紀会に所属し、ここ数年は入選を重ねているということだから大したものだと感心する。
 それから、その画材屋の2階にある絵画教室を案内してもらった。Oは主に美術系大学(美大)に進学するためのコースを受け持っているようで、その教室のアトリエでは今日も高校生の生徒が何人か石膏デッサンなどに打ち込んでいた。画用紙に鉛筆を走らせる高校生らの真剣な姿を前にして自分の受験生時代の記憶が甦る。
 私が進学したのは教育学部だったが、美術専攻であった為にまがいなりにも石膏デッサンなどを受験間近に練習したのだ。そのとき一人で美術室に残りながら描いた石膏や水彩画‥、それからさかのぼって文化祭ではOを含め美術部のみんなで共同制作した巨大模写やオブジェ‥、あの頃の制服姿のメンバーたち‥、それから”T”のことも‥。
 
2月29日の偶然(3)へつづく
 

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