人生という日常の合間に見つけた平凡な感動や、過ぎ去る時間のぼんやり思惑。 人生紀行

 
No.13 私をどぶろく祭りに連れてって(3) 2003.11. 4

 〔え〜!?どこで間違えたのだろう?〕どうりで道案内の看板に目指していない地名が出てきてるハズだ。かなりの時間と体力のロスになってしまった。来た道を戻りながら地図で確認して目的地までの道のりをなんとか修正できた。随分と陽も傾いているが、あと少しで蔵欠だ。
 最後の橋を渡ると蔵欠町まで細い一本道となった。民家も見えなくなり、うっそうとしている杉木立の間の急勾配を登り、蔵欠町の集落に辿り着いたのはちょうど5時であった。(道を間違えなければ自転車での所要は2時間位であったようだ。)
 蔵欠町の集落は現在5戸7世帯。町民は25名というから正真正銘小さな田舎町‥、町というより村。店などは無い。
 5戸の家が一箇所に寄せ合って建っている間の道路を抜けていくと町の公民館と熊野神社の境内入り口が見えてきた。
 やっと蔵欠町の熊野神社へたどりついたのですが‥しかし、今度は祭りの気配が全く無い。自転車を駐車場に置いて辺りを見回すが、神社の祭りに普通見られる「のぼり」や「堤燈」は境内入り口にも村の家々にも無いし、観光客の姿も声も無く、あたりはシーンと静まり返っている。〔あっれ〜、もう祭り終わってるの??それとも今日じゃなかったのかな‥〕近くの公民館にも人の気配が無いのがさらに不安をあおる。
 どうであれ境内に向かおうと石の鳥居をくぐって奥へ行く。外から見た感じでは社の姿は見えない。社はどうやら森を抜けた丘の上にあるようなのだが、境内入り口周辺から続く参道は薄暗くて足元も整備されていないので、祭りはおろか本当に神社があるのかさえも心配になる。その少し気味の悪い参道を行き、急な石段を昇ると猫の額ほどの空き地に建つ熊野神社の社に到着した。
 そこに現れた小さな社はきれいにお供えが並び堤燈もかけられ、近くには青い法被を羽織った人が居るではないか!〔オオ!!祭りは、やっぱりやってたんだ!よかった。う〜でも‥微妙。〕なにせ境内はガラリとしている。法被の男一人と、他3名しか人影は見えない。とにかく閑散として「祭り」という賑わいも「どぶろく」という言葉から発する興奮と熱気も全然感じられない。
 〔どぶろく、まだあるんだろうか?〕落ち着かない気持ちを抑えながら小さな社に賽銭をあげてお祈りを済ませ、法被の男に挨拶をすると‥「どぶろくをどうぞ。」と言って湯飲みを差し出してくれたのだ!〔やったー!来たー!待ってましたー!うれし〜〕
 
私をどぶろく祭りに連れてって(4)へつづく
 

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