人生という日常の合間に見つけた平凡な感動や、過ぎ去る時間のぼんやり思惑。 人生紀行

 
No.3 コーヒー:香しき ひとりの時間(3) 2003. 8. 17

 まずは、レシピ通りのゼラチン量のものから‥、‥、まずい。次!ゼラチン量を減らしたもの。見た目はかなり柔らかいが‥、‥、やっぱりまずい。前回同様コーヒーの味が薄くておいしくないのだ。
 ゼラチンを混ぜて固める前のモカ・コーヒーは、いい香りがしておいしいのになぜだろう?ゼラチンが悪いのだろうか?インスタントコーヒーじゃないと美味しくできないのだろうか?原因がつかめないままその日は眠りについた。
 次の日、職場で試食をしてもらった友人に昨夜のことを話し、原因がつかめないことを相談すると「オガワ先生はコーヒー好きだから何か知ってるかも。」とのこと。すぐにオガワ先生のもとへ行き、コーヒーゼリーにおけるコーヒーのことを聞いてみた。
 オガワ先生は少し考えて言った 「僕はコーヒーゼリーのことは知らないけど、アイスコーヒーはアイスコーヒー用の豆があるよ。」 ナント!私にとっては目からうろこの新事実である。
 勤務が終わるとすぐにコーヒー豆を買いに、いつものスーパーへ。
 豆を売っているコーナーの店員に「冷たいコーヒーのはどれですか?」とたずねればショーケースに並ぶ様々な銘柄の豆の中から真っ黒い色の豆2・3種類を指差した。
 ここで全てが分かった。今までの失敗の原因はコーヒーが薄かったのだ。コーヒーを冷たく冷やすと、あの苦味やコクを感じなくなってしまうのだということだ。冷やして作るコーヒーゼリーも同じこと。インスタントコーヒーならばたくさん入れれば濃くなるから、レシピの本にはインスタントコーヒーでの作り方が一般的に掲載されていたのだが、レギュラーコーヒーで濃いコーヒーを作るためには、深煎りの豆を使用しなければ駄目なのである。深煎りの豆とは、この真っ黒く光るアイスコーヒーに使う豆のこと。
 答えにたどり着いた気がして何かほっとしてしまった。豆の値段は前に買ったモカより安い。(ちなみに前に買ったモカは浅煎り。フレッシュな酸味と芳醇な香りが特徴でアイスには不向き。)
 挽いてもらった深煎りの豆を買って帰ると、やっとその日、美味しいコーヒーゼリーを完成させることができるのだった。
 
コーヒー(4)へつづく
 

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