V−2 《3年ぶりの再会》
 
 「モンゴル ウランバートル スフバートル6地区 41アパート 43号室(?)」 とうとうここまでやってきた。日本を出てから6日間。私にとってはアッと言う間だったが、移動だけに6日間という数字は、いまどきの旅行にしては少々長いかもしれない。
 
「コン、コン。」
 …ドアのノックに反応して、部屋の中で人が移動する気配が伝わる。
やはり人が居るようだ。…緊張と不安が高まる。扉のすぐ裏側に人の気配を感じた次の瞬間、
「どなたですか?」
 
〔日本語だ!しかも日本女性!この声はまみぃ?!(3年ぶりのため88%の確信)〕
「こんにちは、はちすかです。」
 
「…」
つづいてドアが開いた。
 
「えーーーーーー!!」
「うわーーーーーーーー!!」
「はっちさんだーーーーーーー!!」
「本当にはっちさんだーーーーーー!」
「うわーーーー!、こんにちはーー!」
「うひゃーーー!お久しぶりですー。」
「うわーーーー!」
「本物だー。」
〔おお!まみぃだ。〕
〔やったー。みつけたぜー!〕
〔大正解。やるねっ!はちすか。〕
「やぁまみぃさん、こんにちは。」
「どうもお久しぶりです。」
〔だんだん思い出してきた、そーいえばこんな声と顔の表情だった。いやー本当に久しぶりなんだな。〕

 
驚くまみぃ  まるで、一般家庭を訪ねて行った有名スターに対する反応のように驚くまみぃ。こんなに喜んで驚かれると、やっぱり嬉しい。苦労して旅してきた甲斐があるというもの。
 まみぃは現在モンゴルで日本語を教える教師。青年海外協力隊の隊員としてウランバートルで暮らし、1年が過ぎる。ちょうど私が訪ねたときに、彼女は家で韓国人に日本語をボランティアで教えている所だった。訪ねていったとき、部屋に若い男がいて「イケナイ時に来たのかも…」と思った。と言うのも、まみぃは結構モテるんじゃないかと私は思うのだ。ハツラツとして笑顔がかわいくておしゃれでもある。
 それに加えて夢があり、夢に向かって努力をしている。表面は強気で勝ち気なんだけど、結構弱いところもあったりする所なんかは、男心を刺激するのではないだろうか?そしてなにより、喜怒哀楽のイキイキとした表情がチャーミングなのだ。(あと声もかわいい。)
 
 まみぃとは、2年間を大学祭実行委員で一緒に仕事をした。私が4年生のとき彼女が2年生。私が4年生で卒業した後、彼女とは会っていないので、ちょうど3年ぶりの再会となる。学生のときは、先輩と後輩という関係の上でそれなりに親しかったと思う。その大学時代、彼女の心を射止めようと狙う男どもが結構いたのだ。(私独自の調査による。) 私も彼女のことは、人間的にも女性的にも魅力があると思っていたが、私のような気力不足な男では彼女に接近する術を知らず、力も持たなかった。まみぃ自身も私にはさほど興味がないことも感じ取っていたので「先輩と後輩という関係の上でそれなりに親しい」という位置に納まったまま私は卒業したのであった。私はそれについて後悔など微塵もない。そういう関係であり続けたからこそ、こうやって3 年ぶりにでも、モンゴルにでも会いに来れたのだと思う。私にはなんて素晴らしい友達がいることか。
 
 夕方、二人で夕飯を食べにウランバートルの街にくりだした。8時近くだというのに、やっと陽が沈みかけた具合である。モンゴルの夏、陽が沈むのは9時を過ぎる。その夏も夏らしい気候であるのはたったの2週間といわれる。あとは、涼しさと寒さのある春・秋と極寒の冬である。1年の8ヵ月は、日本で言うところの冬だ。厳冬期の朝方には気温はマイナス40℃を下る。その季節、何もかも氷漬けになって人は道を歩かずに滑って移動し、鼻から息を吸い込めば鼻毛が凍り付いてそれが痛いとか…日本の冬しか知らない私にとっては想像を越えた世界である。そんなモンゴルについての話や、これまでのお互いのこと、今の生活、そして大学時代の仲間の話をして、大いにビールを飲みつつウランバートルでの3年ぶりの再会を二人で喜び合った。…そして もう一杯。
 
この旅の第一目的達成に乾杯!!
 

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